川が運んだ石と砂
畑はアラザニ川左岸の第二段丘と、支流ストリ川・ロポタ川の両岸の段丘にあります。地盤は川が運んだ石まじりの壌土と砂の層で、その上に沖積土が5種、崩積土が3種。沖積土は上が褐色がかった灰色、下はより灰色で、4・5番は砂質で石が多い土です。
ジョージアの辛口赤・白ワイン ・ カヘティ ・ PDO
Napareuli ・ ნაფარეული
ナパレウリ(Napareuli)とは、ジョージア・カヘティ地方のテラヴィ、アラザニ川の左岸(北側)でストリ川とロポタ川が谷を出るあたりの特定区域で造られる辛口ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、サペラヴィから造る赤と、ルカツィテリから造る白の両方を定めています。規定を満たしたワインだけが名乗れます。仕様書は、赤は果醪の完全発酵、白は自然流下の果汁の完全発酵、残糖4g/L以下、アルコール11%以上を定めています。1797年にチャフチャヴァゼ家に与えられた領地から始まり、1880年代に「No.47 赤」「No.66 白」の銘柄が生まれ、1890年から造られています。2007年に登録番号790として登録されました。
出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。
01 — 規定
仕様書は、赤と白それぞれに成分を定めています。共通する数値を大きく、赤と白で違う数値は並べて示しました。
| タイプ | 辛口。赤と白の両方を定める。白の色は淡い麦わら色。赤の色は英訳版で「light straw」と記されているが、赤ワインの記述としては誤記と考えられる |
| 使用品種(赤) | サペラヴィと、サペラヴィ・ブデシュリ(ブデシュリ型サペラヴィ)。区域内で収穫したものに限り、他品種の使用は禁止 |
| 使用品種(白) | ルカツィテリ。同じ区域のムツヴァネ・カフリを15%まで加えられる |
| 地域・区域 | カヘティ地方テラヴィ市、アラザニ川左岸(北緯42°3′・東経45°31′)。コーカサス南麓から流れるストリ川とディドヘヴィ・ロポタ川の下流。ナパレウリ、サニオレ、ジュガアニ、アルタナ、プシャヴェリ、ラリスクリの各村 |
| 畑 | 標高450〜750m(区域の章では400〜500mと記載)。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由 |
| 収穫と輸送 | 完熟ブドウのみ、収穫時の糖度19%以上。ポリエチレンの袋は使用不可。輸送中は汚れから守る |
| 収量 | サペラヴィ、サペラヴィ・ブデシュリ、ルカツィテリは10t/ha、ムツヴァネ・カフリは8t/ha以下。ブドウ1tからワイン650L以下(1haから6,500L / 5,200L以下) |
| 製法 | 赤は果醪(果皮とともに)の完全アルコール発酵。白は自然流下の果汁の完全アルコール発酵。使用できる操作・材料はジョージアの法令が認めるものに限る |
| 成分 | 赤: アルコール11%以上、残糖4g/L以下、エキス分22g/L以上、酸度5g/L以上。白: アルコール11%以上、エキス分16g/L以上、酸度5g/L以上(英訳版の白の欄に残糖の記載はなく、辛口の定義に従い4g/L以下として扱う) |
| 醸造場所 | ブドウの処理と醸造はナパレウリの区域内。瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な管理のもと)。流通は容器に詰めたもののみ |
| 表示 | ラテン文字で「NAPAREULI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」。キリル文字の表記も定められている |
| 登録・管理 | 登録番号790、2007年12月10日。申請者・管理機関は国立ワイン庁 |
数値は仕様書(英訳版)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。標高は畑の章の450〜750mを採用しました。
02 — 産地
ナパレウリの区域は、アラザニ渓谷の北側(左岸)、コーカサス山脈の南麓から流れ出るストリ川とロポタ川が谷を出るあたりです。北はコーカサスの南斜面の末端、南はアラザニ川の第一段丘に区切られ、畑は南と南西へ緩やかに傾く平地と、川がつくった段丘に広がります。仕様書はナパレウリ、サニオレ、ジュガアニ、アルタナ、プシャヴェリ、ラリスクリの6村を区域としています。
同じ左岸には、下流にクヴァレリとキンズマラウリの区域があり、対岸の右岸にはツィナンダリがあります。ナパレウリは、ブドウの処理と醸造を区域内で行うと定めた数少ないPDOで、瓶詰めだけがジョージア国内の区域外でも認められます。
地域
ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)はコーカサスに近く、右岸より雲が多く日照が少なめで、土は川が運んだ石と砂が主体です。
対岸の、もうひとつの赤白
アラザニ川をはさんだ右岸のテラヴィで、白のルカツィテリと赤のサペラヴィを定めるPDO。ナパレウリと同じく、チャフチャヴァゼ家の領地から生まれました。
03 — 気候と土壌
仕様書は、右岸より雲が多く日照の少ない左岸の気候と、川が運んだ石と砂の上にできた炭酸塩の少ない土が、ナパレウリの赤と白の性格をつくると説明しています。
年間の日照は2,050時間。コーカサスに近い左岸は右岸より雲が多く、対岸のツィナンダリ(2,300時間超)より少ない日照です。生育期の日照は1,500時間以下。それでも夏は暑く(7〜8月の平均23.4〜23.7℃)、10℃以上の積算温度は3,920℃に達します。
畑はアラザニ川左岸の第二段丘と、支流ストリ川・ロポタ川の両岸の段丘にあります。地盤は川が運んだ石まじりの壌土と砂の層で、その上に沖積土が5種、崩積土が3種。沖積土は上が褐色がかった灰色、下はより灰色で、4・5番は砂質で石が多い土です。
右岸のPDOの多くが炭酸塩の多いアルカリ性の土であるのに対し、ナパレウリの8種のうち炭酸塩を含むのは2種だけ(0.8〜12.8%)。残りは炭酸塩を含まず、pHは6.4〜7.2の中性から弱アルカリ性です。腐植は0.5〜3.0%。
気候と土壌の数値は、仕様書 第10章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。降雹は年1.6日(6月が最多)。積雪は12月下旬から3月初め、年26日で、多くの年は不安定。卓越風は西(23%)、東・南東(16〜17%)、平均風速1.9m/s。積算温度は英訳版で「39-20℃」と記されており、3,920℃として読みました。
04 — 品種
仕様書は、赤にはサペラヴィとサペラヴィ・ブデシュリだけを、白にはルカツィテリと15%までのムツヴァネ・カフリを認めています。いずれも区域内で収穫したものに限ります。
Saperavi ・ 黒
果肉まで色づくジョージアの代表的な黒ブドウ。果皮とともに発酵させ、エキス分22g/L以上の赤になる。
白の品種
ジョージアで最も広く栽培される白ブドウ。仕様書は、同じ区域のムツヴァネ・カフリを15%まで加えられると定めています。収量はルカツィテリ10t/ha、ムツヴァネ8t/ha以下。
赤のもう一つの品種
ブデシュリ型のサペラヴィ。仕様書はサペラヴィと「および/または」で並記し、赤の原料として同じ扱いを認めています。収量は10t/ha以下。
05 — 造り方
赤と白で発酵のさせ方が違い、共通するのは「完全発酵」と「区域内で醸す」こと。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。
使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は19%以上。収量はサペラヴィもルカツィテリも1haあたり10t以下です。
ポリエチレンの袋は使えず、輸送中は汚れから守ります。ブドウの処理はナパレウリの区域内で行います。
サペラヴィの果醪(果皮とともに)を完全にアルコール発酵させます。果皮から色と成分が移り、エキス分は22g/L以上に。
ルカツィテリの、圧力をかけずに流れ出る果汁を完全に発酵させます。果皮を漬け込まないので、色は淡い麦わら色。エキス分は16g/L以上。
醸造はナパレウリの区域内。瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な管理のもと)。ラベルには「NAPAREULI」と「PDO」の表示が入ります。
06 — 歴史
仕様書によれば、ナパレウリは1797年にチャフチャヴァゼ家に与えられた領地に始まり、1886年に帝室領地局が近代化を進めて「No.47 赤」「No.66 白」の銘柄が生まれました。
07 — 味わい
雲の多い左岸が、赤と白に落ち着きを与える。
赤: 欠点がなく、フルで力強く、抽出感があり、調和がとれ、土地を特徴づける香りを持ち、熟成により果実のトーンが現れる。白: 淡い麦わら色。繊細で柔らかく、調和がとれ、軽やかで、花の香りを持ち、熟成により果実のトーンが現れる。
赤はムクザニと同じサペラヴィの辛口ですが、ナパレウリは左岸で日照が少なく、炭酸塩の少ない砂質の土。ムクザニより穏やかで、酸の輪郭がはっきりした赤になるとされます。白は対岸のツィナンダリと同じ品種構成で、こちらも軽やかな性格です。
赤は室温よりやや低め(16〜18℃前後)で、炭火焼きの肉(ムツヴァディ)や煮込みと。白はよく冷やして(8〜10℃前後)、川魚や鶏肉、ハーブのサラダと合わせる例が紹介されます。
08 — 似たPDOと比べる
カヘティの辛口のPDOは、川のどちら岸か、品種と色の組み合わせで名前が分かれます。数値は各PDOの仕様書によります。
09 — 名乗る条件
区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、ナパレウリを名乗れます。


「NAPAREULI」のラベルには赤と白があります。どちらもPDOのナパレウリで、色の違いは品種の違いです。同じ区域のサペラヴィから造った半甘口は、ナパレウリではなく別の呼称の規定に従います。
多くのカヘティのPDOが「カヘティ内での醸造」を認めるのに対し、ナパレウリはブドウの処理と醸造を区域内に限っています。区域外で醸したワインは、ブドウが区域内のものでもナパレウリと名乗れません。
名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。
10 — よくある質問
ジョージア東部カヘティ地方のテラヴィ、アラザニ川左岸の特定区域で造られる辛口ワインです。サペラヴィから造る赤と、ルカツィテリから造る白の両方を仕様書が定めています。残糖4g/L以下、アルコール度数11%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2007年に登録されました。1890年から造られています。
両方あります。赤はサペラヴィ(とサペラヴィ・ブデシュリ)、白はルカツィテリにムツヴァネ・カフリを15%まで加えたものです。どちらも辛口で、ラベルの色の表示で見分けます。
いいえ、赤も白も辛口です。仕様書は残糖を4g/L以下と定め、赤は果醪を、白は果汁を完全に発酵させます。同じ左岸の半甘口の赤はキンズマラウリという別のPDOです。
ジョージア東部、カヘティ地方のテラヴィ市です。アラザニ川の左岸(北側)で、コーカサス山脈から流れるストリ川とロポタ川が谷を出るあたりの標高450〜750mの畑で、仕様書はナパレウリ、サニオレ、ジュガアニ、アルタナ、プシャヴェリ、ラリスクリの6村を区域としています。ブドウの処理と醸造も区域内で行い、瓶詰めだけがジョージア国内の区域外でも認められます。
仕様書は「1890年から」と記しています。1797年にエレクレ王がチャフチャヴァゼ家に与えた領地に始まり、1886年に帝室領地局が買い取って近代化を進め、1880年代に「No.47 赤」「No.66 白」の銘柄が生まれました。PDOとしての登録は2007年12月10日(登録番号790)です。
どちらもテラヴィで赤と白を定めるPDOですが、ツィナンダリはアラザニ川の右岸、ナパレウリは左岸です。左岸は雲が多く日照が少なめ(2,050時間)で、土は炭酸塩の少ない砂質。ツィナンダリは白が主で赤は少数ですが、ナパレウリは赤と白の両方が広く造られています。
どちらもサペラヴィの辛口赤ですが、ムクザニは右岸のグルジャアニで赤だけの呼称、ナパレウリは左岸のテラヴィで白も定めます。ナパレウリは日照が少なく土に炭酸塩が少ないため、ムクザニより穏やかで酸の輪郭がはっきりした赤になるとされます。
いいえ。ナパレウリは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。
ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「NAPAREULI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。赤と白があるので、色の表示もあわせて確かめます。
11 — 飲んでみる
ここまで読んだナパレウリを、グラスで確かめる。ジョージアワイン専門店で、赤と白を並べて飲み比べるのもおすすめです。
本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「ナパレウリ」仕様書(登録番号790、2007年12月10日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。
| 執筆 | ジョージアワインストア データベース編集部 |
| レビュー | 編集部(相互確認) |
| 初回公開 | 2026年9月6日 |
| 最終確認 | 2026年9月24日 |
| 根拠の強さ | B(公的資料。PDO仕様書・法令) |
| 主要出典 | 国立ワイン庁 PDO仕様書「Napareuli」(英訳版)、国立ワイン庁PDO登録一覧 |
| 注記 | 味わいと飲み方の記述は一般的傾向。仕様書の数値は英訳版に基づく。英訳版には赤の色を「light straw」、白の残糖を未記載、標高を400〜500mと450〜750mの2通り、積算温度を「39-20℃」と記す箇所があり、本ページは文脈に従って読んだ |