ジョージアの辛口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO

クヴァレリ

Kvareli ・ ყვარელი

クヴァレリ(Kvareli、クワレリとも)とは、ジョージア・カヘティ地方のアラザニ川左岸、コーカサス山脈の南麓に広がるクヴァレリの一帯で、サペラヴィから造られる辛口の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。天然半甘口のキンズマラウリと同じ土地から生まれる「辛口の答え」で、仕様書は果醪を完全に発酵させる製法、残糖4g/L、アルコール11%以上を定めています。1966年から造られ、2007年に登録番号798として登録されました。

タイプ
辛口の赤
残糖4 g/L
品種
サペラヴィ
他品種の使用は禁止
産地
カヘティ
クヴァレリの一帯、アラザニ川左岸
登録
2007年
登録番号798(12月10日)
根拠の強さ
B
公的資料。PDO仕様書で確認

出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。

01 — 規定

クヴァレリを名乗るための数字。

仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のクヴァレリも、この枠の中で造られます。

残糖
4g/L
辛口。同じ一帯のキンズマラウリ(18〜45 g/L)とは、ここが分かれ目
アルコール度数
11% 以上
ブドウの糖を最後まで発酵させる
収穫時の糖度
19% 以上
完熟したブドウだけを使う
酸度
5g/L 以上
骨格をつくる酸の下限
収量
10t/ha
畑 1 ヘクタールあたり
搾汁
650L 以下
ブドウ 1 t から(1 ha から 6,500 L 以下)
エキス分
22g/L 以上
糖を除いた成分の濃さ
畑の標高
250–550m
コーカサス南麓からアラザニ川の段丘まで
仕様の一覧表を開く(全12項目)
クヴァレリの仕様の要点
タイプ赤・辛口。色は濃い赤
使用品種サペラヴィ。他品種の使用は禁止。区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることは認められる
地域・区域カヘティ地方、クヴァレリ村の行政区域。コーカサス山脈支脈の南斜面(北緯41°30′・東経45°50′)、アラザニ川左岸の段丘。市の西はシルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニ(中・上部)、東はパトマスリ、サナヴァルド、クチャタニ、セリ、チャントリスクリ、ジノビアニ、アハルソペリ、トヒリスツカロ、ムティスジリ、チカアニのガヴァジとバルゴジアニの大部分
畑標高250〜550m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由
収穫と輸送完熟ブドウのみ、収穫時の糖度19%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可
収量10t/ha。ブドウ1tからワイン650L以下(1haから6,500L以下)
製法果醪の完全アルコール発酵。使用できる操作・材料はジョージアの法令が認めるものに限る
成分アルコール11%以上、残糖4g/L、エキス分22g/L以上、酸度5g/L以上
熟成仕様書に熟成の規定はない
醸造場所ブドウは区域内の畑のものに限る(15%の例外あり)。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な記録と管理のもとで)。流通は消費者用容器に詰めた状態のみ
表示ラテン文字で「KVARELI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」。キリル文字の表記も定められている
登録・管理登録番号798、2007年12月10日。申請者・管理機関は国立ワイン庁

数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。

02 — 産地

クヴァレリの産地、コーカサス南麓の段丘。

クヴァレリの区域は、アラザニ渓谷の北側、大コーカサス山脈の支脈が南へ下るクヴァレリ村の一帯です。北は山脈の南麓に接し、畑はアラザニ川の第二段丘の平地と、標高400〜500mの山裾の緩やかな斜面に広がります。

仕様書は区域を村の名前で示しています。市の西側はシルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニの中・上部。東側はパトマスリ、サナヴァルド、クチャタニ、セリ、チャントリスクリ、ジノビアニ、アハルソペリ、トヒリスツカロ、ムティスジリと、チカアニのガヴァジ・バルゴジアニの大部分で、アラザニ川の第一段丘までが範囲です。同じ一帯は、天然半甘口のキンズマラウリの区域でもあります。

地域

カヘティ

ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。

同じ一帯の、別の呼称

キンズマラウリ

同じクヴァレリの一帯で、サペラヴィの発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。

03 — 気候と土壌

長い暖かさが、サペラヴィを熟させる、気候と土壌を解説。

仕様書は、日射・熱・穏やかな夏・湿度が重なってサペラヴィの高品質を生むと説明し、その根拠を気候の数値と土壌の成り立ちで示しています。

気温10℃以上の暖かい期間は212日(4月5日〜11月4日)。渓谷の形のおかげで風は強くならず、冬は穏やか、夏は暖かく長い。仕様書はこの長い生育期が、サペラヴィを9月末の技術的な成熟まで導くと記しています。

年平均気温
12.5℃
7〜8月は23.6℃、最も寒い月で+1.0℃
降水量
1,070mm
年間。うち生育期に800mm
相対湿度
72%
年平均。夏は64〜66%、晩秋は80%
年の最低気温
−10〜−11℃
極値は−23℃と+38℃

海に由来する黒い板状の石

段丘の土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。仕様書は、この石が熱をよく吸収して地温に影響し、ブドウの糖度と品質を高めると説明しています。

段丘の沖積土と、山裾の崩積土

2005年の調査にもとづき、仕様書は土壌を14種に分けています。アラザニ川の第二段丘の平地には深い沖積土(厚さ1〜1.5m、主にローム質、腐植層50〜70cm)、標高400〜500mの山裾には崩積土(厚さ80〜150cm)。炭酸カルシウムは含まないか、ごく少量(0.2〜5.0%)で、pHは中性から弱アルカリ性です。

気候と土壌の数値は、仕様書 第10章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。降雹は年平均2.1日(5月が最多)、腐植は表層で2.5〜5.5%。

04 — 品種

クヴァレリのブドウは、サペラヴィ。

仕様書はサペラヴィだけを認め、他品種を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものが原則で、区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることだけが認められています。

クヴァレリの品種サペラヴィの房。濃い青からほぼ黒の果粒に厚い果粉(イメージ)

Saperavi ・ 黒

サペラヴィ

果肉まで色付くタンテュリエ。濃い色、高い酸、豊かなタンニンが、辛口で熟成に向くワインの土台になる。

同じ品種、同じ一帯

キンズマラウリ

同じクヴァレリの畑のサペラヴィから、発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤。製法と甘辛で名前が分かれます。

同じ品種、対岸の右岸

ムクザニ

アラザニ川の対岸、グルジャアニ周辺のサペラヴィ100%の辛口赤。1888年から造られる辛口赤の旗艦です。

05 — 造り方

クヴァレリの辛口は、最後まで発酵させて生まれる。

キンズマラウリが発酵を途中で止めるのに対し、クヴァレリは果醪を完全に発酵させ、糖をアルコールに変えきります。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。

  1. 完熟を待つ

    使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は19%以上。収量は1haあたり10tです。

  2. 傷めずに運ぶ

    輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えず、汚れから守ることも定められています。

  3. 最後まで発酵させる

    果醪の「完全アルコール発酵」。糖は4g/Lまで減り、アルコールは11%以上になります。

  4. カヘティの中で醸す

    ブドウの処理と醸造はカヘティ地域内に限られます。区域外(カヘティ内)のサペラヴィは15%まで。瓶詰めはジョージア国内で、厳格な記録と管理のもとで行います。

  5. 瓶で届ける

    流通できるのは消費者用の容器に詰めたものだけ。ラベルには「KVARELI」と「PDO」の表示が入ります。

06 — 歴史

クヴァレリの歴史。農家の造りから、8,700ヘクタールの産地へ。

仕様書によれば、クヴァレリのブドウ畑はツィナンダリ、ナパレウリ、ムクザニと違って貴族の領地経営に組み込まれず、20世紀に入ってから産業として発展しました。

  1. 1920年代まで
    農家の造り
    ブドウ栽培とワイン造りは古くから続いていましたが、帝室領地局の近代化の恩恵を受けず、農家の手仕事にとどまっていました。
  2. 1920年代末
    近代的な醸造所が建つ
    専門の研究拠点の設立とともに産業化が始まり、1920年代末から30年代初めにかけて、クヴァレリ(「ツィテリ・マラニ」= 赤い酒蔵)、シルダ、アハルソペリに近代設備の醸造所が建てられました。
  3. 1950年代末
    畑が3.5倍に
    発展の新しい波が起き、クヴァレリの区域のブドウ畑は3.5倍に広がって、1960年代末には8,700ヘクタールに達しました。クヴァレリ、エニセリ、シルダ、チカアニに新しい醸造所が建ち、技術が更新されました。
  4. 1966年
    ワイン「クヴァレリ」の生産が始まる
    仕様書は「クヴァレリは1966年から生産され、金3・銀2のメダルを受けた」と記しています。
  5. 2007年12月
    PDOとして登録
    登録番号798。申請者は国立ワイン庁。同じ一帯のキンズマラウリ(2006年)に続く登録です。

07 — 味わい

クヴァレリの味わいとは?

同じ土地から、辛口の答え。

クヴァレリを注いだグラス(イメージ)
  • 色
    濃い赤
    仕様書が定める色
  • 口当たり
    フルで、ベルベットのよう
    抽出感があり、調和がとれている
  • 香り
    熟成で育つ果実のトーン
    仕様書の官能特性
  • 甘さ
    残糖 4 g/L
    辛口。糖は最後まで発酵させる
  • 酸
    5 g/L 以上
    タンニンとともに骨格をつくる

仕様書が定める味わい

濃い赤色。完成度が高く、フルで抽出感があり、ベルベットのようで調和がとれ、熟成とともに果実のトーンが育つ。

キンズマラウリとの違い

同じ畑のサペラヴィでも、クヴァレリは糖を残さない辛口。半甘口の甘さの代わりに、サペラヴィ本来の高い酸と豊かなタンニンが前に出て、長期熟成に向くタイプとして扱われることが多いとされます。

クヴァレリの飲み方: 温度と合う料理

室温よりやや低め(16〜18℃前後)で供されることが多く、炭火焼きの肉(ムツヴァディ)や、ハーブとクルミを使う料理と合わせる例が紹介されます。

08 — 似たPDOと比べる

クヴァレリと似たジョージアワインの違い。

同じサペラヴィの赤でも、畑の場所と製法が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。

  • クヴァレリ
    カヘティ、クヴァレリ(アラザニ川左岸)
    残糖4g/L
    辛口赤
    サペラヴィ
  • カヘティ、クヴァレリ(左岸、同じ一帯)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ、サペラヴィ・ブデシュリ
  • カヘティ、グルジャアニ(右岸)
    残糖4g/L 以下
    辛口赤
    サペラヴィ100%
  • カヘティ、テラヴィ(左岸)
    残糖4g/L 以下
    辛口赤・白
    サペラヴィ(赤)、ルカツィテリ(白)
  • カヘティ、グルジャアニ(右岸)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ

09 — 名乗る条件

クヴァレリを名乗る条件は、4 つ。

区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、クヴァレリを名乗れます。

クヴァレリのラベルが貼られた赤ワインのボトル(イメージ)
  1. 区域カヘティ、アラザニ川左岸のクヴァレリ村の一帯の畑(区域外のサペラヴィは15%まで)
  2. 品種サペラヴィ。他品種は禁止
  3. 製法果醪の完全アルコール発酵(糖を残さない)
  4. 成分残糖 4 g/L、アルコール 11% 以上、酸 5 g/L 以上、エキス分 22 g/L 以上

クヴァレリ市と、PDOのクヴァレリ

クヴァレリはカヘティ地方の市と村の名前でもあります。PDOの区域は仕様書が村の名前で定めた一帯で、市の全域ではありません。ラベルの「クヴァレリ」はPDO名であり、この区域の畑のサペラヴィから造られたことを示します。

サペラヴィ=クヴァレリではない

クヴァレリは必ずサペラヴィですが、サペラヴィのワインがすべてクヴァレリなわけではありません。区域外のサペラヴィや、半甘口に仕上げたサペラヴィ(同じ一帯なら「キンズマラウリ」)は、クヴァレリと名乗れません。

名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。

10 — よくある質問

よくある質問。

クヴァレリとは、どんなワインですか?

ジョージア東部カヘティ地方、アラザニ川左岸のクヴァレリの一帯で、黒ブドウのサペラヴィから造られる辛口の赤ワインです。果醪を完全に発酵させる製法が仕様書で定められ、残糖4g/L、アルコール度数11%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2007年に登録されました。天然半甘口のキンズマラウリと同じ土地から生まれる、辛口の呼称です。

クヴァレリは甘いワインですか?

いいえ、辛口です。仕様書は残糖を4g/Lと定めています。同じクヴァレリの一帯のサペラヴィでも、発酵を途中で止めて糖を残したものは「キンズマラウリ」と名乗り、最後まで発酵させたものが「クヴァレリ」です。

キンズマラウリとは何が違いますか?

区域はほぼ同じで、品種も同じサペラヴィです。違いは製法と甘辛。キンズマラウリは不完全発酵で残糖18〜45g/Lの天然半甘口、クヴァレリは完全発酵で残糖4g/Lの辛口です。アルコール度数もクヴァレリのほうが高くなります(11%以上、キンズマラウリは10.5%以上)。

クヴァレリに使うブドウは、サペラヴィだけですか?

はい。仕様書はサペラヴィだけを認め、他品種の使用を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものが原則ですが、区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることは認められています。収穫時の糖度は19%以上と定められています。

どこで造られますか?

ジョージア東部、カヘティ地方のアラザニ川左岸、大コーカサス山脈の南麓にあるクヴァレリ村の一帯です。仕様書は市の西側(シルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニ)と東側(パトマスリからチカアニの一部まで)の村を区域としています。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内で行います。

いつから造られていますか?

仕様書は「1966年から」と記しています。クヴァレリのブドウ栽培は古くから続きますが、産業として発展したのは1920年代以降で、1960年代末には区域の畑が8,700ヘクタールに達しました。PDOとしての登録は2007年12月10日(登録番号798)です。

ムクザニとはどう違いますか?

どちらもサペラヴィの辛口赤ですが、区域が違います。ムクザニはアラザニ川の対岸(右岸)、グルジャアニ周辺の呼称で、サペラヴィ100%、熟成する場合は木樽で6か月以上と定められています。クヴァレリは左岸のクヴァレリの一帯で、仕様書に熟成の規定はありません。

「KVARELI」と書かれたワインは、すべて同じ生産者のものですか?

いいえ。クヴァレリは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。

クヴァレリのワインは、どこで買えますか?

ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「KVARELI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。同じ産地の半甘口(キンズマラウリ)と間違えやすいので、「DRY」や「辛口」の表示も手がかりになります。

出典と検証。

本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「クヴァレリ」仕様書(登録番号798、2007年12月10日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。

根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論、出典の一覧は出典ページを参照してください。

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執筆ジョージアワインストア データベース編集部
レビュー編集部(相互確認)
初回公開2026年9月21日
最終確認2026年9月28日
根拠の強さB(公的資料。PDO仕様書・法令)
主要出典国立ワイン庁 PDO仕様書「Kvareli」(英訳版)、国立ワイン庁PDO登録一覧
注記味わいの記述は一般的傾向。仕様書の数値は英訳版に基づく。登録日は登録簿の表記(10/12/2007)を日/月/年として読んだもの

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