海に由来する黒い板状の石
段丘の土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。仕様書は、この石が熱をよく吸収して地温に影響し、ブドウの糖度と品質を高めると説明しています。
ジョージアの辛口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO
Kvareli ・ ყვარელი
クヴァレリ(Kvareli、クワレリとも)とは、ジョージア・カヘティ地方のアラザニ川左岸、コーカサス山脈の南麓に広がるクヴァレリの一帯で、サペラヴィから造られる辛口の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。天然半甘口のキンズマラウリと同じ土地から生まれる「辛口の答え」で、仕様書は果醪を完全に発酵させる製法、残糖4g/L、アルコール11%以上を定めています。1966年から造られ、2007年に登録番号798として登録されました。
出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。
01 — 規定
仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のクヴァレリも、この枠の中で造られます。
| タイプ | 赤・辛口。色は濃い赤 |
| 使用品種 | サペラヴィ。他品種の使用は禁止。区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることは認められる |
| 地域・区域 | カヘティ地方、クヴァレリ村の行政区域。コーカサス山脈支脈の南斜面(北緯41°30′・東経45°50′)、アラザニ川左岸の段丘。市の西はシルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニ(中・上部)、東はパトマスリ、サナヴァルド、クチャタニ、セリ、チャントリスクリ、ジノビアニ、アハルソペリ、トヒリスツカロ、ムティスジリ、チカアニのガヴァジとバルゴジアニの大部分 |
| 畑 | 標高250〜550m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由 |
| 収穫と輸送 | 完熟ブドウのみ、収穫時の糖度19%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可 |
| 収量 | 10t/ha。ブドウ1tからワイン650L以下(1haから6,500L以下) |
| 製法 | 果醪の完全アルコール発酵。使用できる操作・材料はジョージアの法令が認めるものに限る |
| 成分 | アルコール11%以上、残糖4g/L、エキス分22g/L以上、酸度5g/L以上 |
| 熟成 | 仕様書に熟成の規定はない |
| 醸造場所 | ブドウは区域内の畑のものに限る(15%の例外あり)。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な記録と管理のもとで)。流通は消費者用容器に詰めた状態のみ |
| 表示 | ラテン文字で「KVARELI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」。キリル文字の表記も定められている |
| 登録・管理 | 登録番号798、2007年12月10日。申請者・管理機関は国立ワイン庁 |
数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。
02 — 産地
クヴァレリの区域は、アラザニ渓谷の北側、大コーカサス山脈の支脈が南へ下るクヴァレリ村の一帯です。北は山脈の南麓に接し、畑はアラザニ川の第二段丘の平地と、標高400〜500mの山裾の緩やかな斜面に広がります。
仕様書は区域を村の名前で示しています。市の西側はシルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニの中・上部。東側はパトマスリ、サナヴァルド、クチャタニ、セリ、チャントリスクリ、ジノビアニ、アハルソペリ、トヒリスツカロ、ムティスジリと、チカアニのガヴァジ・バルゴジアニの大部分で、アラザニ川の第一段丘までが範囲です。同じ一帯は、天然半甘口のキンズマラウリの区域でもあります。
地域
ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。
同じ一帯の、別の呼称
同じクヴァレリの一帯で、サペラヴィの発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。
03 — 気候と土壌
仕様書は、日射・熱・穏やかな夏・湿度が重なってサペラヴィの高品質を生むと説明し、その根拠を気候の数値と土壌の成り立ちで示しています。
気温10℃以上の暖かい期間は212日(4月5日〜11月4日)。渓谷の形のおかげで風は強くならず、冬は穏やか、夏は暖かく長い。仕様書はこの長い生育期が、サペラヴィを9月末の技術的な成熟まで導くと記しています。
段丘の土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。仕様書は、この石が熱をよく吸収して地温に影響し、ブドウの糖度と品質を高めると説明しています。
2005年の調査にもとづき、仕様書は土壌を14種に分けています。アラザニ川の第二段丘の平地には深い沖積土(厚さ1〜1.5m、主にローム質、腐植層50〜70cm)、標高400〜500mの山裾には崩積土(厚さ80〜150cm)。炭酸カルシウムは含まないか、ごく少量(0.2〜5.0%)で、pHは中性から弱アルカリ性です。
気候と土壌の数値は、仕様書 第10章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。降雹は年平均2.1日(5月が最多)、腐植は表層で2.5〜5.5%。
04 — 品種
仕様書はサペラヴィだけを認め、他品種を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものが原則で、区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることだけが認められています。
Saperavi ・ 黒
果肉まで色付くタンテュリエ。濃い色、高い酸、豊かなタンニンが、辛口で熟成に向くワインの土台になる。
同じ品種、同じ一帯
同じクヴァレリの畑のサペラヴィから、発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤。製法と甘辛で名前が分かれます。
同じ品種、対岸の右岸
アラザニ川の対岸、グルジャアニ周辺のサペラヴィ100%の辛口赤。1888年から造られる辛口赤の旗艦です。
05 — 造り方
キンズマラウリが発酵を途中で止めるのに対し、クヴァレリは果醪を完全に発酵させ、糖をアルコールに変えきります。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。
使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は19%以上。収量は1haあたり10tです。
輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えず、汚れから守ることも定められています。
果醪の「完全アルコール発酵」。糖は4g/Lまで減り、アルコールは11%以上になります。
ブドウの処理と醸造はカヘティ地域内に限られます。区域外(カヘティ内)のサペラヴィは15%まで。瓶詰めはジョージア国内で、厳格な記録と管理のもとで行います。
流通できるのは消費者用の容器に詰めたものだけ。ラベルには「KVARELI」と「PDO」の表示が入ります。
06 — 歴史
仕様書によれば、クヴァレリのブドウ畑はツィナンダリ、ナパレウリ、ムクザニと違って貴族の領地経営に組み込まれず、20世紀に入ってから産業として発展しました。
07 — 味わい
同じ土地から、辛口の答え。
濃い赤色。完成度が高く、フルで抽出感があり、ベルベットのようで調和がとれ、熟成とともに果実のトーンが育つ。
同じ畑のサペラヴィでも、クヴァレリは糖を残さない辛口。半甘口の甘さの代わりに、サペラヴィ本来の高い酸と豊かなタンニンが前に出て、長期熟成に向くタイプとして扱われることが多いとされます。
室温よりやや低め(16〜18℃前後)で供されることが多く、炭火焼きの肉(ムツヴァディ)や、ハーブとクルミを使う料理と合わせる例が紹介されます。
08 — 似たPDOと比べる
同じサペラヴィの赤でも、畑の場所と製法が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。
09 — 名乗る条件
区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、クヴァレリを名乗れます。


クヴァレリはカヘティ地方の市と村の名前でもあります。PDOの区域は仕様書が村の名前で定めた一帯で、市の全域ではありません。ラベルの「クヴァレリ」はPDO名であり、この区域の畑のサペラヴィから造られたことを示します。
クヴァレリは必ずサペラヴィですが、サペラヴィのワインがすべてクヴァレリなわけではありません。区域外のサペラヴィや、半甘口に仕上げたサペラヴィ(同じ一帯なら「キンズマラウリ」)は、クヴァレリと名乗れません。
名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。
10 — よくある質問
ジョージア東部カヘティ地方、アラザニ川左岸のクヴァレリの一帯で、黒ブドウのサペラヴィから造られる辛口の赤ワインです。果醪を完全に発酵させる製法が仕様書で定められ、残糖4g/L、アルコール度数11%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2007年に登録されました。天然半甘口のキンズマラウリと同じ土地から生まれる、辛口の呼称です。
いいえ、辛口です。仕様書は残糖を4g/Lと定めています。同じクヴァレリの一帯のサペラヴィでも、発酵を途中で止めて糖を残したものは「キンズマラウリ」と名乗り、最後まで発酵させたものが「クヴァレリ」です。
区域はほぼ同じで、品種も同じサペラヴィです。違いは製法と甘辛。キンズマラウリは不完全発酵で残糖18〜45g/Lの天然半甘口、クヴァレリは完全発酵で残糖4g/Lの辛口です。アルコール度数もクヴァレリのほうが高くなります(11%以上、キンズマラウリは10.5%以上)。
はい。仕様書はサペラヴィだけを認め、他品種の使用を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものが原則ですが、区域外(カヘティ内)のサペラヴィを15%まで加えることは認められています。収穫時の糖度は19%以上と定められています。
ジョージア東部、カヘティ地方のアラザニ川左岸、大コーカサス山脈の南麓にあるクヴァレリ村の一帯です。仕様書は市の西側(シルディ、エニセリ、グレミ、シャクリアニ)と東側(パトマスリからチカアニの一部まで)の村を区域としています。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内で行います。
仕様書は「1966年から」と記しています。クヴァレリのブドウ栽培は古くから続きますが、産業として発展したのは1920年代以降で、1960年代末には区域の畑が8,700ヘクタールに達しました。PDOとしての登録は2007年12月10日(登録番号798)です。
どちらもサペラヴィの辛口赤ですが、区域が違います。ムクザニはアラザニ川の対岸(右岸)、グルジャアニ周辺の呼称で、サペラヴィ100%、熟成する場合は木樽で6か月以上と定められています。クヴァレリは左岸のクヴァレリの一帯で、仕様書に熟成の規定はありません。
いいえ。クヴァレリは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。
ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「KVARELI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。同じ産地の半甘口(キンズマラウリ)と間違えやすいので、「DRY」や「辛口」の表示も手がかりになります。
11 — 飲んでみる
ここまで読んだクヴァレリを、グラスで確かめる。ジョージアワイン専門店で、同じ一帯の半甘口(キンズマラウリ)と飲み比べるのもおすすめです。
本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「クヴァレリ」仕様書(登録番号798、2007年12月10日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。