ドゥルジ川が運んだ黒い板状の石
土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。黒い土は日射を15%しか反射せず、熱をよく吸収するため地温が上がります。仕様書は、これがブドウの糖度と品質を高める温度条件をつくると説明しています。
ジョージアの半甘口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO
Kindzmarauli ・ ქინძმარაული
キンズマラウリ(Kindzmarauli、キンヅマラウリとも)とは、ジョージア・カヘティ地方クヴァレリ市の特定区域で、サペラヴィから造られる天然半甘口(セミスイート)の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。発酵を途中で止めてブドウ由来の糖(残糖18〜45g/L)を残す製法が仕様書で定められており、加糖による甘さではありません。2006年登録(登録番号787)。ジョージアのPDOワインの中で輸出量が最も多い呼称の一つです。
出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。
01 — 規定
仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のキンズマラウリも、この枠の中で造られます。
| タイプ | 赤・天然半甘口。色は濃い赤 |
| 使用品種 | サペラヴィ、およびサペラヴィ・ブデシュリ。他品種の使用は禁止 |
| 地域・区域 | カヘティ地方クヴァレリ市の行政区域内。大コーカサス山脈支脈の南斜面(北緯41°30′・東経45°50′)。仕様書は村名ではなく市の境界と座標で区域を定める |
| 畑 | 標高250〜550m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由 |
| 収穫と輸送 | 完熟ブドウのみ、収穫時の糖度22%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可 |
| 収量 | 10t/ha。ブドウ1tからワイン650L以下(1haから6,500L以下) |
| 製法 | 果醪の不完全アルコール発酵(発酵を途中で止め、ブドウ由来の糖を残す)。使用できる操作・材料はジョージアの法令が認めるものに限る |
| 成分 | アルコール10.5%以上、残糖18〜45g/L、エキス分22g/L以上、酸度5g/L以上 |
| 熟成 | 仕様書に熟成の規定はない |
| 醸造場所 | ブドウは区域内の畑のものに限る。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な記録と管理のもとで)。流通は消費者用容器に詰めた状態のみ |
| 表示 | ラテン文字で「KINDZMARAULI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」。キリル文字の表記も定められている |
| 登録・管理 | 登録番号787、2006年3月30日。申請者・管理機関は国立ワイン庁 |
数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。
02 — 産地
キンズマラウリの区域は、アラザニ渓谷の北側、大コーカサス山脈の支脈が南へ下るクヴァレリ市の一帯です。畑は緩やか(2〜3°)な南向き斜面とアラザニ川の段丘に広がります。
区域の西側、ドゥルジ川の右岸はわずかに波打ちながら南西へ傾き、残りは東から南へ向く平地です。渓谷は南東に開き、南は閉じているため、風は北西と南東から入りますが、強くはなりません。
地域
ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。
同じ一帯の、別の呼称
同じクヴァレリの一帯で、サペラヴィを完全に発酵させた辛口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。
03 — 気候と土壌
仕様書は、この土地がサペラヴィの糖度を高める理由を、気候の数値と土壌の成り立ちで説明しています。
黒い石の表面は、隣の土より3〜5℃高い。ドゥルジ川が運んだ黒い板状の石は、隣の炭酸塩を含まない沖積土より高温になります。仕様書は、これがサペラヴィの糖度を高める要因だと説明しています。
土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。黒い土は日射を15%しか反射せず、熱をよく吸収するため地温が上がります。仕様書は、これがブドウの糖度と品質を高める温度条件をつくると説明しています。
2005年の調査にもとづき、仕様書は土壌を14種に分けています。アラザニ川の第二段丘の平地には深い沖積土(厚さ1〜1.5m、主にローム質)、標高400〜500mの山裾には崩積土。炭酸カルシウムは含まないか、ごく少量(0.2〜5.0%)で、pHは5.8〜7.6です。
気候と土壌の数値は、仕様書 第10章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。気温の極値は−23℃と+38℃、年間の平均相対湿度は72%、降雹は年平均2.1日(5月が最多)。
04 — 品種
仕様書はサペラヴィと、サペラヴィ・ブデシュリの使用を認め、他品種を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものに限られます。
Saperavi ・ 黒
果肉まで色付くタンテュリエ。高い酸が残糖を支え、半甘口でも重たくなりにくい。
同じ品種、別のPDO
同じサペラヴィを完全発酵させた辛口赤。区域はアラザニ川の対岸(右岸)のグルジャアニ周辺。
05 — 造り方
「天然」半甘口とは、砂糖や濃縮果汁を足すのではなく、発酵を途中で止めてブドウ自身の糖を残すことです。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。
使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は22%以上。収量は1haあたり10tです。
輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えず、汚れから守ることも定められています。
果醪の「不完全アルコール発酵」。糖が18〜45g/L残り、アルコールは10.5%以上になります。
ブドウの処理と醸造はカヘティ地域内に限られます。瓶詰めは区域外でもよいものの、ジョージア国内で、厳格な記録と管理のもとで行います。
流通できるのは消費者用の容器に詰めたものだけ。ラベルには「KINDZMARAULI」と「PDO」の表示が入ります。
06 — 歴史
仕様書によれば、クヴァレリのブドウ畑はツィナンダリ、ナパレウリ、ムクザニと違って貴族の領地経営に組み込まれず、別の道をたどりました。
07 — 味わい
甘さを、酸が支える。
濃い赤色。調和がとれ、ベルベットのようで上品、心地よい甘さと果実のトーン、サペラヴィらしい香味。
半甘口(セミスイート)の甘さはサペラヴィの酸とタンニンに支えられ、デザートワインのような重い甘さにはなりにくいとされます。若いうちに飲まれることが多いスタイルです。
やや冷やして供されることが多く、辛味のある料理やブルーチーズと合わせる例が紹介されます。
08 — 似たPDOと比べる
同じサペラヴィ、同じ天然半甘口でも、畑の場所が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。
09 — 名乗る条件
区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、キンズマラウリを名乗れます。


キンズマラウリは残糖18〜45g/Lの半甘口です。デザートワインや酒精強化ワインのような甘口とは区分が異なり、ジョージアの分類では「天然半甘口(naturally semi-sweet)」に当たります。
区域外の畑で造られた半甘口のサペラヴィは、同じスタイルでもキンズマラウリと名乗れません。「Semi-sweet Saperavi」などの表示との違いは、区域の規定にあります。
名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。
10 — よくある質問
ジョージア東部カヘティ地方のクヴァレリ市の特定区域で、黒ブドウのサペラヴィから造られる半甘口(セミスイート)の赤ワインです。発酵を途中で止めてブドウ由来の糖を残す製法が仕様書で定められ、残糖18〜45g/L、アルコール度数10.5%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2006年に登録されました。
半甘口の赤です。仕様書は残糖を18〜45g/Lと定めています。あわせて酸度5g/L以上も求められるため、甘さと酸の両方を備えたワインになります。残糖に幅があるので、甘さの印象は生産者によって変わります。
いいえ。仕様書が定める製法は、果醪の「不完全アルコール発酵」です。発酵を途中で止めて、ブドウに由来する糖を残します。「天然半甘口」の「天然」はこの意味です。
サペラヴィと、その系統のサペラヴィ・ブデシュリの 2 つに限られます。他の品種は使えません。ブドウはキンズマラウリの区域内の畑で収穫したものに限られ、収穫時の糖度は22%以上と定められています。
ジョージア東部、カヘティ地方のクヴァレリ市の区域です。大コーカサス山脈の南麓、アラザニ川の左岸にあたります。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内で行うことが定められています。
仕様書は「1942年から」と記しています。それ以前は、秋冬の寒さで発酵が自然に止まる農家の造りで、生産は安定していませんでした。PDOとしての登録は2006年3月30日(登録番号787)です。
アハシェニは同じサペラヴィの天然半甘口赤ですが、区域がアラザニ川の対岸(右岸)のグルジャアニ側です。ムクザニは同じサペラヴィを完全に発酵させた辛口赤(残糖4g/L以下)です。名前が示すのは区域とタイプの違いです。
いいえ。キンズマラウリは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。
ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「KINDZMARAULI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。生産者によって甘さの印象が違うので、残糖の値や店の説明を手がかりに選びます。
11 — 飲んでみる
ここまで読んだキンズマラウリを、グラスで確かめる。ジョージアワイン専門店で、生産者ごとの甘さの違いを選べます。
本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「キンズマラウリ」仕様書(登録番号787、2006年3月30日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史・輸出量の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。