ジョージアの半甘口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO

キンズマラウリ

Kindzmarauli ・ ქინძმარაული

キンズマラウリ(Kindzmarauli、キンヅマラウリとも)とは、ジョージア・カヘティ地方クヴァレリ市の特定区域で、サペラヴィから造られる天然半甘口(セミスイート)の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。発酵を途中で止めてブドウ由来の糖(残糖18〜45g/L)を残す製法が仕様書で定められており、加糖による甘さではありません。2006年登録(登録番号787)。ジョージアのPDOワインの中で輸出量が最も多い呼称の一つです。

タイプ
天然半甘口の赤
残糖18〜45 g/L
品種
サペラヴィ
サペラヴィ・ブデシュリも可。他は禁止
産地
カヘティ
クヴァレリ市、アラザニ川左岸
登録
2006年
登録番号787(3月30日)
根拠の強さ
B
公的資料。PDO仕様書で確認

出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。

01 — 規定

キンズマラウリを名乗るための数字。

仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のキンズマラウリも、この枠の中で造られます。

残糖
18–45g/L
半甘口。幅があり、甘さの印象は生産者で変わる
アルコール度数
10.5% 以上
発酵を途中で止めるため、辛口より低め
収穫時の糖度
22% 以上
完熟したブドウだけを使う
酸度
5g/L 以上
甘さを支える酸の下限
収量
10t/ha
畑 1 ヘクタールあたり
搾汁
650L 以下
ブドウ 1 t から(1 ha から 6,500 L 以下)
エキス分
22g/L 以上
糖を除いた成分の濃さ
畑の標高
250–550m
コーカサス南麓からアラザニ川の段丘まで
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キンズマラウリの仕様の要点
タイプ赤・天然半甘口。色は濃い赤
使用品種サペラヴィ、およびサペラヴィ・ブデシュリ。他品種の使用は禁止
地域・区域カヘティ地方クヴァレリ市の行政区域内。大コーカサス山脈支脈の南斜面(北緯41°30′・東経45°50′)。仕様書は村名ではなく市の境界と座標で区域を定める
畑標高250〜550m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由
収穫と輸送完熟ブドウのみ、収穫時の糖度22%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可
収量10t/ha。ブドウ1tからワイン650L以下(1haから6,500L以下)
製法果醪の不完全アルコール発酵(発酵を途中で止め、ブドウ由来の糖を残す)。使用できる操作・材料はジョージアの法令が認めるものに限る
成分アルコール10.5%以上、残糖18〜45g/L、エキス分22g/L以上、酸度5g/L以上
熟成仕様書に熟成の規定はない
醸造場所ブドウは区域内の畑のものに限る。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内であれば区域外でも可(厳格な記録と管理のもとで)。流通は消費者用容器に詰めた状態のみ
表示ラテン文字で「KINDZMARAULI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」。キリル文字の表記も定められている
登録・管理登録番号787、2006年3月30日。申請者・管理機関は国立ワイン庁

数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。

02 — 産地

キンズマラウリの産地、コーカサスの南麓。

キンズマラウリの区域は、アラザニ渓谷の北側、大コーカサス山脈の支脈が南へ下るクヴァレリ市の一帯です。畑は緩やか(2〜3°)な南向き斜面とアラザニ川の段丘に広がります。

区域の西側、ドゥルジ川の右岸はわずかに波打ちながら南西へ傾き、残りは東から南へ向く平地です。渓谷は南東に開き、南は閉じているため、風は北西と南東から入りますが、強くはなりません。

地域

カヘティ

ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。

同じ一帯の、別の呼称

クヴァレリ

同じクヴァレリの一帯で、サペラヴィを完全に発酵させた辛口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。

03 — 気候と土壌

黒い石が、畑を温める、気候と土壌を解説。

仕様書は、この土地がサペラヴィの糖度を高める理由を、気候の数値と土壌の成り立ちで説明しています。

黒い石の表面は、隣の土より3〜5℃高い。ドゥルジ川が運んだ黒い板状の石は、隣の炭酸塩を含まない沖積土より高温になります。仕様書は、これがサペラヴィの糖度を高める要因だと説明しています。

年平均気温
12.5℃
7〜8月は23.6℃、最も寒い月で+1.0℃
日照
2,050時間
年間。畑は主に2〜3°の南向き斜面
降水量
1,070mm
年間。うち生育期に800mm
霜のない期間
239日
最後の春霜は平均3月26日、初霜は11月21日

ドゥルジ川が運んだ黒い板状の石

土壌のもとになっているのは、コーカサスの南斜面から崩れて運ばれた、海に由来する黒い板状の石です。黒い土は日射を15%しか反射せず、熱をよく吸収するため地温が上がります。仕様書は、これがブドウの糖度と品質を高める温度条件をつくると説明しています。

段丘の沖積土と、山裾の崩積土

2005年の調査にもとづき、仕様書は土壌を14種に分けています。アラザニ川の第二段丘の平地には深い沖積土(厚さ1〜1.5m、主にローム質)、標高400〜500mの山裾には崩積土。炭酸カルシウムは含まないか、ごく少量(0.2〜5.0%)で、pHは5.8〜7.6です。

気候と土壌の数値は、仕様書 第10章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。気温の極値は−23℃と+38℃、年間の平均相対湿度は72%、降雹は年平均2.1日(5月が最多)。

04 — 品種

キンズマラウリのブドウは、サペラヴィ。

仕様書はサペラヴィと、サペラヴィ・ブデシュリの使用を認め、他品種を禁止しています。ブドウは区域内の畑で収穫したものに限られます。

キンズマラウリの品種サペラヴィの房。濃い青からほぼ黒の果粒に厚い果粉(イメージ)

Saperavi ・ 黒

サペラヴィ

果肉まで色付くタンテュリエ。高い酸が残糖を支え、半甘口でも重たくなりにくい。

併用が認められる系統

サペラヴィ・ブデシュリ

「サペラヴィ」の名を共有する別系統で、仕様書が使用を認めています。品種としての区別はサペラヴィのページの表記一覧を参照。

同じ品種、別のPDO

ムクザニ

同じサペラヴィを完全発酵させた辛口赤。区域はアラザニ川の対岸(右岸)のグルジャアニ周辺。

05 — 造り方

キンズマラウリの甘さは、発酵を止めて残す。

「天然」半甘口とは、砂糖や濃縮果汁を足すのではなく、発酵を途中で止めてブドウ自身の糖を残すことです。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。

  1. 完熟を待つ

    使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は22%以上。収量は1haあたり10tです。

  2. 傷めずに運ぶ

    輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えず、汚れから守ることも定められています。

  3. 発酵を途中で止める

    果醪の「不完全アルコール発酵」。糖が18〜45g/L残り、アルコールは10.5%以上になります。

  4. カヘティの中で醸す

    ブドウの処理と醸造はカヘティ地域内に限られます。瓶詰めは区域外でもよいものの、ジョージア国内で、厳格な記録と管理のもとで行います。

  5. 瓶で届ける

    流通できるのは消費者用の容器に詰めたものだけ。ラベルには「KINDZMARAULI」と「PDO」の表示が入ります。

06 — 歴史

キンズマラウリの歴史。寒さまかせの甘さから、冷却の技術へ。

仕様書によれば、クヴァレリのブドウ畑はツィナンダリ、ナパレウリ、ムクザニと違って貴族の領地経営に組み込まれず、別の道をたどりました。

  1. 1942年まで
    農家の造り
    秋冬の寒さで発酵が自然に止まり、春の暖かさで再び動き出す。甘さを長く保つ技術がなく、生産は安定しませんでした。
  2. 1942年
    冷却による半甘口の技術
    政府の決議により、新しい技術の開発、設備の更新、冷却法の導入が始まります。仕様書は「キンズマラウリは1942年から生産されている」と記しています。
  3. 1990年まで
    品評会で8つのメダル
    数多くのコンクールと展示会に出品されました。
  4. 2006年3月
    PDOとして登録
    登録番号787。申請者は国立ワイン庁。
  5. 2014年
    最も輸出されるPDOワインに
    930万本が国際市場で販売され、ジョージアのワイン輸出全体の15.8%、PDOワイン販売の49%を占めました(基準年2014年)。

07 — 味わい

キンズマラウリの味わいとは?

甘さを、酸が支える。

キンズマラウリを注いだグラス(イメージ)
  • 色
    濃い赤
    仕様書が定める色
  • 口当たり
    ベルベットのよう
    調和がとれ、上品
  • 香り
    果実のトーン
    サペラヴィらしい香味
  • 甘さ
    残糖 18–45 g/L
    半甘口。生産者で幅がある
  • 酸
    5 g/L 以上
    甘さを重たくしない

仕様書が定める味わい

濃い赤色。調和がとれ、ベルベットのようで上品、心地よい甘さと果実のトーン、サペラヴィらしい香味。

甘口ワインとの違い

半甘口(セミスイート)の甘さはサペラヴィの酸とタンニンに支えられ、デザートワインのような重い甘さにはなりにくいとされます。若いうちに飲まれることが多いスタイルです。

キンズマラウリの飲み方: 温度と合う料理

やや冷やして供されることが多く、辛味のある料理やブルーチーズと合わせる例が紹介されます。

08 — 似たPDOと比べる

キンズマラウリと似たジョージアワインの違い。

同じサペラヴィ、同じ天然半甘口でも、畑の場所が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。

  • キンズマラウリ
    カヘティ、クヴァレリ(アラザニ川左岸)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ、サペラヴィ・ブデシュリ
  • カヘティ、グルジャアニ(右岸)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ
  • ラチャ、アンブロラウリ
    残糖30–45g/L
    天然半甘口赤
    アレクサンドロウリ、ムジュレトゥリ
  • カヘティ、クヴァレリ(左岸、同じ一帯)
    残糖4g/L
    辛口赤
    サペラヴィ
  • カヘティ、グルジャアニ(右岸)
    残糖4g/L 以下
    辛口赤
    サペラヴィ100%

09 — 名乗る条件

キンズマラウリを名乗る条件は、4 つ。

区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、キンズマラウリを名乗れます。

キンズマラウリのラベルが貼られた赤ワインのボトル(イメージ)
  1. 区域カヘティ、クヴァレリ市の特定区域の畑
  2. 品種サペラヴィ、サペラヴィ・ブデシュリ
  3. 製法果醪の不完全アルコール発酵(発酵を途中で止める)
  4. 成分残糖 18〜45 g/L、アルコール 10.5% 以上、酸 5 g/L 以上

「甘口」ではなく「半甘口」

キンズマラウリは残糖18〜45g/Lの半甘口です。デザートワインや酒精強化ワインのような甘口とは区分が異なり、ジョージアの分類では「天然半甘口(naturally semi-sweet)」に当たります。

半甘口サペラヴィ=キンズマラウリではない

区域外の畑で造られた半甘口のサペラヴィは、同じスタイルでもキンズマラウリと名乗れません。「Semi-sweet Saperavi」などの表示との違いは、区域の規定にあります。

名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。

10 — よくある質問

よくある質問。

キンズマラウリとは、どんなワインですか?

ジョージア東部カヘティ地方のクヴァレリ市の特定区域で、黒ブドウのサペラヴィから造られる半甘口(セミスイート)の赤ワインです。発酵を途中で止めてブドウ由来の糖を残す製法が仕様書で定められ、残糖18〜45g/L、アルコール度数10.5%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2006年に登録されました。

キンズマラウリは甘いワインですか?

半甘口の赤です。仕様書は残糖を18〜45g/Lと定めています。あわせて酸度5g/L以上も求められるため、甘さと酸の両方を備えたワインになります。残糖に幅があるので、甘さの印象は生産者によって変わります。

甘さは砂糖を加えたものですか?

いいえ。仕様書が定める製法は、果醪の「不完全アルコール発酵」です。発酵を途中で止めて、ブドウに由来する糖を残します。「天然半甘口」の「天然」はこの意味です。

キンズマラウリに使うブドウは、サペラヴィだけですか?

サペラヴィと、その系統のサペラヴィ・ブデシュリの 2 つに限られます。他の品種は使えません。ブドウはキンズマラウリの区域内の畑で収穫したものに限られ、収穫時の糖度は22%以上と定められています。

どこで造られますか?

ジョージア東部、カヘティ地方のクヴァレリ市の区域です。大コーカサス山脈の南麓、アラザニ川の左岸にあたります。醸造はカヘティ地域内、瓶詰めはジョージア国内で行うことが定められています。

いつから造られていますか?

仕様書は「1942年から」と記しています。それ以前は、秋冬の寒さで発酵が自然に止まる農家の造りで、生産は安定していませんでした。PDOとしての登録は2006年3月30日(登録番号787)です。

アハシェニ、ムクザニとはどう違いますか?

アハシェニは同じサペラヴィの天然半甘口赤ですが、区域がアラザニ川の対岸(右岸)のグルジャアニ側です。ムクザニは同じサペラヴィを完全に発酵させた辛口赤(残糖4g/L以下)です。名前が示すのは区域とタイプの違いです。

「KINDZMARAULI」と書かれたワインは、すべて同じ生産者のものですか?

いいえ。キンズマラウリは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。

キンズマラウリのワインは、どこで買えますか?

ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「KINDZMARAULI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。生産者によって甘さの印象が違うので、残糖の値や店の説明を手がかりに選びます。

出典と検証。

本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「キンズマラウリ」仕様書(登録番号787、2006年3月30日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史・輸出量の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。

根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論、出典の一覧は出典ページを参照してください。

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執筆ジョージアワインストア データベース編集部
レビュー編集部(相互確認)
初回公開2026年9月4日
最終確認2026年9月28日
根拠の強さB(公的資料。PDO仕様書・法令)
主要出典国立ワイン庁 PDO仕様書「Kindzmarauli」(英訳版)、国立ワイン庁PDO登録一覧
注記味わいの記述は一般的傾向。仕様書の数値は英訳版に基づく。輸出統計の基準年は2014年

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