炭酸塩を含む褐色土
仕様書は土壌を褐色土・沖積土・崖錐性の土壌の9種に分けています。主体は厚い褐色土で、深さは80〜130cm。ローム質から粘土質で、上層は粒状、下層へ向かって塊状になります。下層ほど炭酸カルシウムが多く(下層で24%)、石灰の斑点と小石を含み、pHは弱アルカリ性です。
ジョージアの辛口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO
Mukuzani ・ მუკუზანი
ムクザニ(Mukuzani、ムクザーニとも)とは、ジョージア・カヘティ地方のアラザニ川右岸、グルジャアニ市周辺の特定区域で、サペラヴィ100%から造られる辛口の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。仕様書は果醪を完全に発酵させる製法、残糖4g/L以下、熟成を行う場合は木樽で6か月以上と定めています。1888年から造られ、2005年に登録番号2として登録された、ジョージア辛口赤の代表格です。
出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。
01 — 規定
仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のムクザニも、この枠の中で造られます。
| タイプ | 赤・辛口。色は濃いガーネット(濃い赤) |
| 使用品種 | サペラヴィ100%。他品種の使用は禁止 |
| 地域・区域 | カヘティ地方(内カヘティ)、アラザニ川右岸。ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面からアラザニ川までの範囲で、グルジャアニ市の10村(チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ)を含む |
| 畑 | 標高350〜700m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由 |
| 収穫と輸送 | 完熟ブドウのみ、収穫時の糖度19%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可 |
| 収量 | 10t/ha以下。ブドウ1tからワイン650L以下 |
| 製法 | 除梗のうえ、果醪を30℃以下で完全にアルコール発酵。その後マロラクティック発酵、最後に亜硫酸添加 |
| 成分 | 実アルコール11%以上(総アルコール15%以下)、残糖4g/L以下、酸度5g/L以上、揮発酸1.2g/L以下、エキス分22g/L以上、総亜硫酸150mg/L以下 |
| 熟成 | 任意。熟成せずに瓶詰めしてもよい。熟成する場合は木樽で6か月以上 |
| 醸造場所 | ブドウは区域内の畑のものに限る。醸造は区域内、または区域外でもカヘティ栽培地域内であれば可。流通は瓶詰めのみ |
| 表示 | ラテン文字で「MUKUZANI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」 |
| 登録・管理 | 登録番号2、2005年8月30日。申請者・管理機関は国立ワイン庁 |
数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。
02 — 産地
ムクザニの区域は、アラザニ渓谷の南側(右岸)、ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面がアラザニ川へ下る一帯です。南西を山系、北東を川に区切られ、北西のアクリ渓谷から南東のタナナ渓谷までが範囲。畑は北東を向く斜面の標高350〜700mに広がります。
仕様書は区域をグルジャアニ市の10の村で示しています。チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ。このうちアハシェニ、ゼガアニ、ヴァジスバニは、それぞれ別のPDOの名前でもあります。
地域
ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。
同じ村を含む、別の呼称
ムクザニ区域内の村の名前で、同じサペラヴィから発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。
03 — 気候と土壌
仕様書は、この土地がサペラヴィを完熟させる理由を、日照と気温の数値、そして炭酸塩を含む褐色土で説明しています。
生育期の日照は1,600時間(年間2,150〜2,200時間)。畑のある斜面は東西に地平線が開けているため、北東向きでも日射を効率よく受けられると仕様書は説明しています。夜には大コーカサスの氷河から冷たい空気が流れ下り、冬と春の霜を強めます。
仕様書は土壌を褐色土・沖積土・崖錐性の土壌の9種に分けています。主体は厚い褐色土で、深さは80〜130cm。ローム質から粘土質で、上層は粒状、下層へ向かって塊状になります。下層ほど炭酸カルシウムが多く(下層で24%)、石灰の斑点と小石を含み、pHは弱アルカリ性です。
区域の中央、ツィヴ・ゴンボリ山系の北東の山麓には、崖錐性の炭酸塩土壌がゆるやかな帯をつくります。腐植は全体に少なく、窒素・リン・カリウムも乏しい土地ですが、仕様書は斜面の向き、日照、気候の条件が重なって高品質のムクザニを生むと説明しています。
気候と土壌の数値は、仕様書 第9章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。気温の絶対最低は−9〜−11℃(10年に一度は−15℃)、卓越風は西(32%)と南西(23%)、平均風速1.4m/s。
04 — 品種
仕様書は「サペラヴィのブドウのみから造り、他品種の使用を禁止する」と定めています。ブドウは区域内の畑で収穫したものに限られます。
Saperavi ・ 黒
果肉まで色付くタンテュリエ。濃い色、高い酸、豊かなタンニンが、辛口で熟成に向くワインの土台になる。
同じ品種、別のPDO
同じサペラヴィから、発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤。区域はアラザニ川の対岸(左岸)のクヴァレリ。
同じ品種、同じ右岸
ムクザニ区域内の村の名前を持つ天然半甘口赤のPDO。同じ畑のサペラヴィでも、製法と甘辛で名前が分かれます。
05 — 造り方
除梗した果醪を30℃以下で完全に発酵させ、マロラクティック発酵を経て仕上げる。熟成は任意で、行う場合は木樽で6か月以上。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。
使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は19%以上。収量は1haあたり10t以下です。
輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えません。
除梗した果醪を30℃以下で完全にアルコール発酵。糖は4g/L以下まで減り、アルコールは11%以上になります。その後マロラクティック発酵、最後に亜硫酸添加。
熟成は任意で、熟成せずに瓶詰めしてもかまいません。行う場合は木樽で6か月以上と定められています。
醸造は区域内か、区域外でもカヘティ栽培地域内。流通できるのは瓶に詰めたものだけで、ラベルには「MUKUZANI」と「PDO」の表示が入ります。
06 — 歴史
仕様書によれば、ムクザニのブドウ栽培は古くから続き、19世紀に領地経営と近代化の波を受けて、ジョージアを代表する辛口赤になりました。
07 — 味わい
熟成が、香りを開く。
濃いガーネット(濃い赤)。完成度が高く、フルで抽出感があり、ベルベットのようで調和がとれ、土地を特徴づける香りを持つ。熟成により果実のトーンのブーケが強く現れる。
現行の仕様書では熟成は任意で、行う場合に木樽で6か月以上と定めるにとどまります。ステンレスだけで仕上げた若いものは果実と酸が前に出て、樽熟成を経たものは丸みとスパイス、乾いた果実の印象が加わるとされます。
室温よりやや低め(16〜18℃前後)で供されることが多く、炭火焼きの肉(ムツヴァディ)や、ハーブとクルミを使う料理と合わせる例が紹介されます。
08 — 似たPDOと比べる
同じサペラヴィの赤でも、畑の場所と製法が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。
09 — 名乗る条件
区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、ムクザニを名乗れます。


ムクザニはグルジャアニ市の村の名前でもあります。PDOの区域は村より広く、周辺の10村を含みます。ラベルの「ムクザニ」はPDO名であり、ムクザニ村の畑に限られるわけではありません。
ムクザニは必ずサペラヴィ100%ですが、サペラヴィのワインがすべてムクザニなわけではありません。区域外のサペラヴィや、半甘口のサペラヴィは、ムクザニと名乗れません。
名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。
10 — よくある質問
ジョージア東部カヘティ地方、アラザニ川右岸のグルジャアニ市周辺の特定区域で、黒ブドウのサペラヴィ100%から造られる辛口の赤ワインです。果醪を完全に発酵させる製法が仕様書で定められ、残糖4g/L以下、アルコール度数11%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2005年に登録されました。1888年から造られる、ジョージア辛口赤の代表格です。
いいえ、辛口です。仕様書は残糖を4g/L以下と定めています。同じサペラヴィでも、発酵を途中で止めて糖を残す半甘口のキンズマラウリやアハシェニとは、製法と甘辛が違います。
いいえ。現行の仕様書では熟成は任意で、熟成せずに瓶詰めしてもかまいません。熟成を行う場合は木樽で6か月以上と定められています。熟成の長さは生産者やラベルの情報で確認します。
はい。仕様書はサペラヴィのみを認め、他品種の使用を禁止しています。ブドウはムクザニの区域内の畑で収穫したものに限られ、収穫時の糖度は19%以上と定められています。
ジョージア東部、カヘティ地方のアラザニ川右岸、ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面がアラザニ川へ下る一帯です。仕様書はグルジャアニ市の10村(チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ)を区域としています。醸造は区域内か、区域外でもカヘティ栽培地域内で行います。
仕様書は「1888年から」と記しています。19世紀初めのチャフチャヴァゼ家の領地、1880年代の帝室領地局による近代化を経て生まれ、1990年までに国際品評会で13のメダルを受けました。PDOとしての登録は2005年8月30日(登録番号2)です。
どちらも同じサペラヴィの赤ですが、発酵を途中で止めて糖を残す天然半甘口(残糖18〜45g/L)です。ムクザニは最後まで発酵させた辛口(残糖4g/L以下)。アハシェニはムクザニと同じ右岸の一帯、キンズマラウリは対岸(左岸)のクヴァレリが区域です。
いいえ。ムクザニは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。
ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「MUKUZANI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。熟成の有無や長さは生産者によって違うので、ラベルや店の説明を手がかりに選びます。
11 — 飲んでみる
ここまで読んだムクザニを、グラスで確かめる。ジョージアワイン専門店で、生産者ごとの熟成の違いを選べます。
本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「ムクザニ」仕様書(登録番号2、2005年8月30日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。