ジョージアの辛口赤ワイン ・ カヘティ ・ PDO

ムクザニ

Mukuzani ・ მუკუზანი

ムクザニ(Mukuzani、ムクザーニとも)とは、ジョージア・カヘティ地方のアラザニ川右岸、グルジャアニ市周辺の特定区域で、サペラヴィ100%から造られる辛口の赤ワインです。名前は産地呼称(PDO)で、規定を満たしたワインだけが名乗れます。仕様書は果醪を完全に発酵させる製法、残糖4g/L以下、熟成を行う場合は木樽で6か月以上と定めています。1888年から造られ、2005年に登録番号2として登録された、ジョージア辛口赤の代表格です。

タイプ
辛口の赤
残糖4 g/L以下
品種
サペラヴィ100%
他品種の使用は禁止
産地
カヘティ
アラザニ川右岸、グルジャアニ市の10村
登録
2005年
登録番号2(8月30日)
根拠の強さ
B
公的資料。PDO仕様書で確認

出典は国立ワイン庁の仕様書(英訳版)。公式の登録ページ(英語) ・ 根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。

01 — 規定

ムクザニを名乗るための数字。

仕様書は、ブドウの熟度から瓶の中の成分までを数値で定めています。どの生産者のムクザニも、この枠の中で造られます。

残糖
4g/L 以下
辛口。ブドウの糖を最後まで発酵させ、アルコールに変える
アルコール度数
11% 以上
実アルコール。総アルコールは15%以下
収穫時の糖度
19% 以上
完熟したブドウだけを使う
酸度
5g/L 以上
骨格をつくる酸の下限
収量
10t/ha
畑 1 ヘクタールあたり
搾汁
650L 以下
ブドウ 1 t から
エキス分
22g/L 以上
糖を除いた成分の濃さ
畑の標高
350–700m
ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面からアラザニ川まで
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ムクザニの仕様の要点
タイプ赤・辛口。色は濃いガーネット(濃い赤)
使用品種サペラヴィ100%。他品種の使用は禁止
地域・区域カヘティ地方(内カヘティ)、アラザニ川右岸。ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面からアラザニ川までの範囲で、グルジャアニ市の10村(チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ)を含む
畑標高350〜700m。畝間1〜3m、株間0.8〜1.5m、幹の高さ60〜90cm。剪定は片側式、ジョージア式両側、または自由
収穫と輸送完熟ブドウのみ、収穫時の糖度19%以上。輸送は木箱・プラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台。ポリエチレンの袋は使用不可
収量10t/ha以下。ブドウ1tからワイン650L以下
製法除梗のうえ、果醪を30℃以下で完全にアルコール発酵。その後マロラクティック発酵、最後に亜硫酸添加
成分実アルコール11%以上(総アルコール15%以下)、残糖4g/L以下、酸度5g/L以上、揮発酸1.2g/L以下、エキス分22g/L以上、総亜硫酸150mg/L以下
熟成任意。熟成せずに瓶詰めしてもよい。熟成する場合は木樽で6か月以上
醸造場所ブドウは区域内の畑のものに限る。醸造は区域内、または区域外でもカヘティ栽培地域内であれば可。流通は瓶詰めのみ
表示ラテン文字で「MUKUZANI」、「Protected Designation of Origin」または「PDO」
登録・管理登録番号2、2005年8月30日。申請者・管理機関は国立ワイン庁

数値は仕様書(英訳版、2023年1月印刷)に基づきます。原語版と相違がある場合は原語版が優先されます。

02 — 産地

ムクザニの産地、アラザニ右岸のゴンボリ山麓。

ムクザニの区域は、アラザニ渓谷の南側(右岸)、ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面がアラザニ川へ下る一帯です。南西を山系、北東を川に区切られ、北西のアクリ渓谷から南東のタナナ渓谷までが範囲。畑は北東を向く斜面の標高350〜700mに広がります。

仕様書は区域をグルジャアニ市の10の村で示しています。チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ。このうちアハシェニ、ゼガアニ、ヴァジスバニは、それぞれ別のPDOの名前でもあります。

地域

カヘティ

ジョージア最大のワイン産地。アラザニ渓谷の北側(左岸)と南側(右岸)で土壌と日照が異なり、PDOの区分にも反映されています。

同じ村を含む、別の呼称

アハシェニ

ムクザニ区域内の村の名前で、同じサペラヴィから発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤のPDO。違いは甘辛と製法です。

03 — 気候と土壌

北東を向く斜面に、光が長く当たる、気候と土壌を解説。

仕様書は、この土地がサペラヴィを完熟させる理由を、日照と気温の数値、そして炭酸塩を含む褐色土で説明しています。

生育期の日照は1,600時間(年間2,150〜2,200時間)。畑のある斜面は東西に地平線が開けているため、北東向きでも日射を効率よく受けられると仕様書は説明しています。夜には大コーカサスの氷河から冷たい空気が流れ下り、冬と春の霜を強めます。

年平均気温
12.5℃
7〜8月は23.6℃、最も寒い1月で+1.1℃
降水量
870mm
年間。うち生育期に645mm。6〜8月は少なく、灌漑が必要
霜のない期間
230日以上
最後の霜は3月24日(10年に一度は4月中旬まで)
相対湿度
71%
年平均。7月63%、8月60%と夏は乾く

炭酸塩を含む褐色土

仕様書は土壌を褐色土・沖積土・崖錐性の土壌の9種に分けています。主体は厚い褐色土で、深さは80〜130cm。ローム質から粘土質で、上層は粒状、下層へ向かって塊状になります。下層ほど炭酸カルシウムが多く(下層で24%)、石灰の斑点と小石を含み、pHは弱アルカリ性です。

山麓の崖錐、川沿いの沖積土

区域の中央、ツィヴ・ゴンボリ山系の北東の山麓には、崖錐性の炭酸塩土壌がゆるやかな帯をつくります。腐植は全体に少なく、窒素・リン・カリウムも乏しい土地ですが、仕様書は斜面の向き、日照、気候の条件が重なって高品質のムクザニを生むと説明しています。

気候と土壌の数値は、仕様書 第9章「品質・評判と地理的区域との結びつき」によります。気温の絶対最低は−9〜−11℃(10年に一度は−15℃)、卓越風は西(32%)と南西(23%)、平均風速1.4m/s。

04 — 品種

ムクザニのブドウは、サペラヴィだけ。

仕様書は「サペラヴィのブドウのみから造り、他品種の使用を禁止する」と定めています。ブドウは区域内の畑で収穫したものに限られます。

ムクザニの品種サペラヴィの房。濃い青からほぼ黒の果粒に厚い果粉(イメージ)

Saperavi ・ 黒

サペラヴィ

果肉まで色付くタンテュリエ。濃い色、高い酸、豊かなタンニンが、辛口で熟成に向くワインの土台になる。

同じ品種、別のPDO

キンズマラウリ

同じサペラヴィから、発酵を途中で止めて造る天然半甘口赤。区域はアラザニ川の対岸(左岸)のクヴァレリ。

同じ品種、同じ右岸

アハシェニ

ムクザニ区域内の村の名前を持つ天然半甘口赤のPDO。同じ畑のサペラヴィでも、製法と甘辛で名前が分かれます。

05 — 造り方

ムクザニの辛口は、最後まで発酵させて生まれる。

除梗した果醪を30℃以下で完全に発酵させ、マロラクティック発酵を経て仕上げる。熟成は任意で、行う場合は木樽で6か月以上。仕様書が定める流れを、畑から出荷まで順に追います。

  1. 完熟を待つ

    使えるのは完熟したブドウだけ。収穫時の糖度は19%以上。収量は1haあたり10t以下です。

  2. 傷めずに運ぶ

    輸送は木箱かプラスチック箱、またはステンレス製か専用塗装の荷台で。ポリエチレンの袋は使えません。

  3. 最後まで発酵させる

    除梗した果醪を30℃以下で完全にアルコール発酵。糖は4g/L以下まで減り、アルコールは11%以上になります。その後マロラクティック発酵、最後に亜硫酸添加。

  4. 熟成は、するなら木樽で

    熟成は任意で、熟成せずに瓶詰めしてもかまいません。行う場合は木樽で6か月以上と定められています。

  5. 瓶で届ける

    醸造は区域内か、区域外でもカヘティ栽培地域内。流通できるのは瓶に詰めたものだけで、ラベルには「MUKUZANI」と「PDO」の表示が入ります。

06 — 歴史

ムクザニの歴史。貴族の領地から、辛口赤の旗艦へ。

仕様書によれば、ムクザニのブドウ栽培は古くから続き、19世紀に領地経営と近代化の波を受けて、ジョージアを代表する辛口赤になりました。

  1. 19世紀初め
    チャフチャヴァゼ家の領地
    アレクサンドレ・チャフチャヴァゼの領地がこの地で知られ、大きな投資と先進的な技術で目立つ存在になります。
  2. 1880年代
    帝室領となり、畑と醸造所を近代化
    農奴制の廃止後、雇用労働による資本主義的な農場経営が広がります。帝室領地局がムクザニやゼガアニを含むカヘティ貴族の領地を大規模に買い上げ、ブドウ畑と醸造所の近代化を急速に進めました。
  3. 1888年
    ワイン「ムクザニ」の生産が始まる
    仕様書は「ムクザニは1888年から生産され、ジョージアの辛口赤ワインの旗艦とみなされている」と記しています。
  4. 1920年代
    接ぎ木の苗と、新しい醸造所
    トビリシとテラヴィにジョージアの科学研究の拠点が生まれ、接ぎ木した苗木で新しい畑が拓かれます。ムクザニとゼガアニに近代設備の醸造所が建てられ、新しい技術が導入されました。
  5. 1990年まで
    国際品評会で13のメダル
    金8、銀4、銅1。各国のコンクールと展示会で受賞を重ねました。
  6. 2005年8月
    PDOとして登録
    登録番号2。申請者は国立ワイン庁。

07 — 味わい

ムクザニの味わいとは?

熟成が、香りを開く。

ムクザニを注いだグラス(イメージ)
  • 色
    濃いガーネット
    仕様書が定める色
  • 口当たり
    フルで、ベルベットのよう
    抽出感があり、調和がとれている
  • 香り
    熟成で開く果実のブーケ
    土地を映す香りが、熟成で強く現れる
  • 甘さ
    残糖 4 g/L 以下
    辛口。糖は最後まで発酵させる
  • 酸
    5 g/L 以上
    タンニンとともに骨格をつくる

仕様書が定める味わい

濃いガーネット(濃い赤)。完成度が高く、フルで抽出感があり、ベルベットのようで調和がとれ、土地を特徴づける香りを持つ。熟成により果実のトーンのブーケが強く現れる。

熟成の有無で変わる

現行の仕様書では熟成は任意で、行う場合に木樽で6か月以上と定めるにとどまります。ステンレスだけで仕上げた若いものは果実と酸が前に出て、樽熟成を経たものは丸みとスパイス、乾いた果実の印象が加わるとされます。

ムクザニの飲み方: 温度と合う料理

室温よりやや低め(16〜18℃前後)で供されることが多く、炭火焼きの肉(ムツヴァディ)や、ハーブとクルミを使う料理と合わせる例が紹介されます。

08 — 似たPDOと比べる

ムクザニと似たジョージアワインの違い。

同じサペラヴィの赤でも、畑の場所と製法が違えば別の呼称になります。数値は各PDOの仕様書によります。

  • ムクザニ
    カヘティ、グルジャアニ(アラザニ川右岸)
    残糖4g/L 以下
    辛口赤
    サペラヴィ100%
  • カヘティ、クヴァレリ(左岸)
    残糖4g/L
    辛口赤
    サペラヴィ
  • カヘティ、テラヴィ(左岸)
    残糖4g/L 以下
    辛口赤・白
    サペラヴィ(赤)、ルカツィテリ(白)
  • カヘティ、グルジャアニ(右岸、同じ一帯)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ
  • カヘティ、クヴァレリ(左岸)
    残糖18–45g/L
    天然半甘口赤
    サペラヴィ、サペラヴィ・ブデシュリ

09 — 名乗る条件

ムクザニを名乗る条件は、4 つ。

区域・品種・製法・成分。国立ワイン庁の仕様書が定める 4 つを満たしたワインだけが、ムクザニを名乗れます。

ムクザニのラベルが貼られた赤ワインのボトル(イメージ)
  1. 区域カヘティ、アラザニ川右岸のグルジャアニ市10村の畑
  2. 品種サペラヴィ100%。他品種は禁止
  3. 製法除梗、30℃以下で完全発酵、マロラクティック発酵。熟成するなら木樽で6か月以上
  4. 成分残糖 4 g/L 以下、アルコール 11% 以上、酸 5 g/L 以上、エキス分 22 g/L 以上

村のムクザニと、PDOのムクザニ

ムクザニはグルジャアニ市の村の名前でもあります。PDOの区域は村より広く、周辺の10村を含みます。ラベルの「ムクザニ」はPDO名であり、ムクザニ村の畑に限られるわけではありません。

サペラヴィ=ムクザニではない

ムクザニは必ずサペラヴィ100%ですが、サペラヴィのワインがすべてムクザニなわけではありません。区域外のサペラヴィや、半甘口のサペラヴィは、ムクザニと名乗れません。

名前は商標ではなく PDO(原産地呼称)。申請者は国立ワイン庁で、規定に適合したワインだけがこの名前を名乗れます。ボトルの写真はイメージです。

10 — よくある質問

よくある質問。

ムクザニとは、どんなワインですか?

ジョージア東部カヘティ地方、アラザニ川右岸のグルジャアニ市周辺の特定区域で、黒ブドウのサペラヴィ100%から造られる辛口の赤ワインです。果醪を完全に発酵させる製法が仕様書で定められ、残糖4g/L以下、アルコール度数11%以上。名前は産地呼称(PDO)で、2005年に登録されました。1888年から造られる、ジョージア辛口赤の代表格です。

ムクザニは甘いワインですか?

いいえ、辛口です。仕様書は残糖を4g/L以下と定めています。同じサペラヴィでも、発酵を途中で止めて糖を残す半甘口のキンズマラウリやアハシェニとは、製法と甘辛が違います。

ムクザニは必ず樽で熟成していますか?

いいえ。現行の仕様書では熟成は任意で、熟成せずに瓶詰めしてもかまいません。熟成を行う場合は木樽で6か月以上と定められています。熟成の長さは生産者やラベルの情報で確認します。

ムクザニに使うブドウは、サペラヴィだけですか?

はい。仕様書はサペラヴィのみを認め、他品種の使用を禁止しています。ブドウはムクザニの区域内の畑で収穫したものに限られ、収穫時の糖度は19%以上と定められています。

どこで造られますか?

ジョージア東部、カヘティ地方のアラザニ川右岸、ツィヴ・ゴンボリ山系の斜面がアラザニ川へ下る一帯です。仕様書はグルジャアニ市の10村(チュムラキ、アハシェニ、ゼガアニ、ムクザニ、ヴェリスツィヘ、ヴァジスバニ、シャシアニ、カラウラ、ヴァチナジアニ、カヒパリ)を区域としています。醸造は区域内か、区域外でもカヘティ栽培地域内で行います。

いつから造られていますか?

仕様書は「1888年から」と記しています。19世紀初めのチャフチャヴァゼ家の領地、1880年代の帝室領地局による近代化を経て生まれ、1990年までに国際品評会で13のメダルを受けました。PDOとしての登録は2005年8月30日(登録番号2)です。

キンズマラウリ、アハシェニとはどう違いますか?

どちらも同じサペラヴィの赤ですが、発酵を途中で止めて糖を残す天然半甘口(残糖18〜45g/L)です。ムクザニは最後まで発酵させた辛口(残糖4g/L以下)。アハシェニはムクザニと同じ右岸の一帯、キンズマラウリは対岸(左岸)のクヴァレリが区域です。

「MUKUZANI」と書かれたワインは、すべて同じ生産者のものですか?

いいえ。ムクザニは商標ではなくPDO(原産地呼称)の名前で、申請者は国立ワイン庁です。複数の生産者がこの名前でワインを造っており、いずれも仕様書の区域・品種・製法・成分の規定に適合している必要があります。

ムクザニのワインは、どこで買えますか?

ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルに「MUKUZANI」と PDO の表示があるものを選ぶと確実です。熟成の有無や長さは生産者によって違うので、ラベルや店の説明を手がかりに選びます。

出典と検証。

本ページの規定に関する記述は、国立ワイン庁(LEPL National Wine Agency)が公開するPDO「ムクザニ」仕様書(登録番号2、2005年8月30日登録)の英訳版に基づきます。気候・土壌・歴史の記述も同仕様書の「地理的要因との関連」の章によります。

根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論、出典の一覧は出典ページを参照してください。

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執筆ジョージアワインストア データベース編集部
レビュー編集部(相互確認)
初回公開2026年9月4日
最終確認2026年9月28日
根拠の強さB(公的資料。PDO仕様書・法令)
主要出典国立ワイン庁 PDO仕様書「Mukuzani」(英訳版)、国立ワイン庁PDO登録一覧
注記味わいの記述は一般的傾向。仕様書の数値は英訳版に基づく

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