白品種 ・ ワイン用 ・ 品種登録番号 6283

キシ

Kisi ・ ქისი

キシは、ジョージア東部カヘティ、特にアフメタやテラヴィ周辺で栽培される白ブドウ品種です。20世紀後半にほぼ姿を消しましたが、2000年代以降に少数の生産者が復興を進め、いまは注目度の高い品種です。花や桃を思わせる芳香を持ち、クヴェヴリ(土に埋めた素焼きの甕)で醸したアンバー(オレンジ)ワインで特に評価されています。

キシの房の接写。灰色がかった黄緑の楕円形の果粒に厚い果粉、密な円錐形の房、切れ込みの浅い3裂の葉。垣根仕立ての畑(イメージ)
栽培面積
666ha
国立ワイン庁(2023年)
使用品種に挙げるPDO
3件
キシ・マグラアニ、アフメタなど
主産地
カヘティ
アフメタ・テラヴィ周辺
収穫
9月中旬〜
中生・アフメタ地区が中心
根拠の強さ
A
A〜E でもっとも確か。DNAで品種を確認済み

根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論を参照。出典は出典一覧に記載。

01 — 名称

キシ、カヘティに古くから伝わる名。

ქისი=Kisi

キシ(ქისი)は、カヘティで古くから使われてきた品種名で、ジョージアのブドウ品種図鑑にもこの地方の古い品種として記録されています。ラテン文字では Kisi と書き、英語では Kissi と綴られることもあります。

02 — 復活したブドウ

一度は消えかけた、カヘティの白。

キシは、どんな道をたどってきたブドウなのか。20世紀後半、キシの畑はほぼ姿を消しました。その白を、カヘティの生産者たちがよみがえらせています。

2000年代以降、カヘティの生産者が復興を進めた白。村ごとの小さな造り手が、畑をよみがえらせてきました。

20世紀後半に衰退

うどんこ病など菌類の病気に弱いことが、衰退の一因でした。

アフメタの村から

復興の中心はカヘティ北西部のアフメタ地区。マグラアニ、アルゴヒ、ババネウリなどの村に畑が集まります。

アンバーで高い評価

果皮・種ごとクヴェヴリで醸したアンバーワインが、キシの評価を高めました。

03 — 味わい

キシの味わいとは?

花と桃の香り、丸みのある酸。

辛口白の場合の目安です。

香り

白い花、柑橘、リンゴ、洋梨、桃を思わせる芳香。ルカツィテリより香りが華やかです。

アンバーワインでは

クヴェヴリで醸すと琥珀色になり、杏、オレンジピール、蜂蜜、ナッツ、スパイスの風味と、白ワインにはないタンニンが現れます。

国際品種で例えると

芳香系の辛口白です。ヴィオニエやピノ・グリのような白に近いイメージです。

キシの白ワインをグラスに、雨上がりの夕暮れの街路に面したテーブルで。サラダとパンを添えて(イメージ)

合わせる料理

ハーブ焼きと、ハチャプリ。

辛口白は鶏肉や白身魚のハーブ焼き、ジョージアのチーズパン「ハチャプリ」、天ぷらと。アンバーは胡桃を使ったジョージア料理、熟成チーズ、発酵食品や香辛料の効いた料理に。

04 — スタイル

辛口、アンバー、村のワイン。3つのスタイル。

同じキシでも、摘む時期と造り方で味わいが変わります。カヘティでは9月中旬から下旬に収穫し、辛口の白は酸を残して早めに、クヴェヴリのアンバーは果皮の熟度を待って摘みます。好みのスタイルを見つけてください。

カヘティでのキシの収穫の合間。収穫箱に積んだ黄緑色の房を前に、農家が軒先のベンチで一房を手に語らう(イメージ)
キシの熟す時期と育ち方
成熟期・収穫中生(生育期間は平均142日)
木の勢い中
収量中(ルカツィテリ、ムツヴァネ・カフリより少ない)

成熟期・樹勢・収量はジョージアのブドウ品種を記録した図鑑『ジョージア・アンペログラフィア』(1960年)によります。

1つの品種、3つの顔。

STYLE 01

辛口白(近代的製法)

品種の芳香を素直に示す、辛口の白。

造り
ステンレスタンク、果皮接触なし
色
淡い色調
香り
花と桃
味わい
丸みのある酸

カヘティのテラヴィからクヴァレリにかけて、アラザニ渓谷の近代的な設備を持つワイナリーが造っています。

STYLE 02

クヴェヴリ・アンバー

花の香りが残る、琥珀色のアンバー。

造り
果皮・種とともにクヴェヴリで醸す
色
琥珀色
香り
杏・蜂蜜・ナッツ
味わい
明確なタンニン

カヘティのマラニ(醸造場)で、修道院から小規模生産者まで伝統が続いています。

STYLE 03

アフメタの村のワイン

村名や畑名を冠した、小さな造り手のボトル。

PDO
キシ・マグラアニ(辛口白・辛口アンバー)
味わい
辛口白とアンバーの中間的なものも

キシの畑が集まるのは、カヘティ北西部アフメタ地区のマグラアニ、アルゴヒ、ババネウリなどの村です。

05 — ブドウとしての性質

房、粒、葉の形。

灰色がかった黄緑の粒に、かなり厚い白い粉。畑でキシを見分ける手がかりを、ジョージアのブドウ品種図鑑『ジョージア・アンペログラフィア』(1960年)の測定値で紹介します。

キシの特徴の解説図。円錐形で密、時に翼付きの房、灰色がかった黄緑の果皮、厚い果粉をまとった楕円形の果粒、多汁な果肉、主に3裂で浅い切れ込みの葉(イメージ)
果皮色
灰色がかった黄緑
果粉(粒の表面の白い粉)がかなり厚い
果粒
楕円
長さ15〜18.5mm、幅14.5〜16.3mm
房
円錐形
長さ12〜24cm、幅5〜12cm(平均 長さ18cm、幅10cm)。粒は密につく
葉
3つに裂ける
全体は丸い形
もっと詳しく見る(皮の厚さ、果肉、房の重さ、葉の表と裏)
キシの形態
果皮薄い
果粉かなり厚い
果肉・果汁多汁
房の重さ80〜450g(平均120〜160g)
葉の切れ込み上側の切れ込みは浅い
葉の表濃い緑
葉の裏クモの巣状の毛と、中程度のフェルト状の毛

出典: 『ジョージア・アンペログラフィア』(1960年)。英訳を掲載するジョージア国立議会図書館のウェブ辞典(NPLG Wiki Dictionaries)で確認しています。同じデータは品種マスターリストでも確認できます。

06 — PDOと産地

キシを使う、3つのPDO。

PDO(原産地呼称)は、産地と造り方が法律で定められたワインの名前です。ラベルに「キシ・マグラアニ」とあれば、それはキシだけで造る辛口の白かアンバー。キシを使う3つのPDOのうち、キシが主役なのはキシ・マグラアニで、ほかの2つではほかの品種と組み合わせて使われます。

PDOの一覧を見る(3件)
キシを使用品種に挙げるPDO
PDO区域タイプ使用品種
キシ・マグラアニKisi Magraaniカヘティ(アフメタ)辛口白・辛口アンバーキシのみ
アフメタAkhmeta (Akhmetis Mtsvane)カヘティ(アフメタ)白(辛口〜天然半甘口)・アンバームツヴァネ・カフリのみ(アンバーはキシ・ヒフヴィを合わせて15%まで)
カヘティKakheti (Kakhuri)カヘティ全域白・赤・ロゼ・アンバー(辛口〜甘口。地方全体の呼称)白・アンバー: ルカツィテリ、ムツヴァネ・カフリ、キシ、ヒフヴィほか / 赤: サペラヴィ、カベルネ・ソーヴィニヨンほか

07 — よくある質問

よくある質問。

キシはどこで造られている? アンバーワインはどんな味? 気になる9つの疑問に、短く答えます。

キシはどんなブドウですか?

ジョージア東部カヘティの白ブドウ品種です。20世紀後半にほぼ姿を消しましたが、2000年代以降にカヘティの生産者が復興を進め、花や桃の芳香を持つ白として注目されています。

キシはどこで造られていますか?

ジョージア東部のカヘティ、特にアフメタやテラヴィ周辺で栽培されています。中心はカヘティ北西部のアフメタ地区です。

キシの名前の由来は?

カヘティで古くから使われてきた品種名で、ジョージアのブドウ品種図鑑にも、この地方の古い品種として記録されています。

キシの味の特徴は?

白い花、柑橘、リンゴ、洋梨、桃を思わせる芳香が特徴です。ルカツィテリより香りが華やかで、酸は穏やかです。

キシのアンバーワインはどんな味ですか?

果皮とともにクヴェヴリ(土に埋めた素焼きの甕)で醸すため、白ワインにはないタンニンと琥珀色を持ちます。杏、オレンジピール、蜂蜜、ナッツ、スパイスの風味が現れます。

キシに合う料理は?

辛口白は鶏肉や白身魚のハーブ焼き、ジョージアのチーズパン「ハチャプリ」、天ぷらなどが目安です。アンバーは胡桃を使ったジョージア料理、熟成チーズ、発酵食品や香辛料の効いた料理と合わせます。

キシを使うPDOは?

3件あります。キシだけで造る辛口白と辛口アンバーを定めるのが、アフメタ地区の「キシ・マグラアニ」です。ほかに、アンバーにヒフヴィと合わせて15%まで加えられる「アフメタ」と、カヘティ全域の呼称「カヘティ」があります。

キシの栽培面積は?

国立ワイン庁のブドウ畑カダストル(国の畑の登録記録、2023年)では666 haで、ルカツィテリの約27分の1の規模です。

キシのワインは、どこで買えますか?

ジョージアワインの専門店や輸入元の通販で入手できます。ラベルの品種名「Kisi」やPDO名「キシ・マグラアニ」を手がかりに探し、辛口白かクヴェヴリのアンバーかを確かめると選びやすくなります。

出典と検証。

キシは、国際的なブドウ品種の登録簿 VIVC に6283番で登録され、ジョージア在来品種のDNA研究にもその型が含まれています。ジョージア国内の研究機関で、遺伝資源として保存されています。

詳細な参照情報は出典一覧および品種マスターリスト(CSV / JSON)で公開しています。

このページの検証状態

このページの検証状態
執筆ジョージアワインストア データベース編集部
レビュー編集部(品種データ担当が相互確認)
初回公開2026年9月4日
最終確認2026年9月28日
根拠の強さA(DNA・保存株。DNAで品種を確認済み)
主要出典VIVC、国立ワイン庁(ブドウ畑カダストル2023)、査読論文、品種図鑑

根拠の強さ(A〜E)の定義は方法論、運営体制はこのサイトについてを参照。

資料は、こう書いている。

このページの根拠になった資料を、資料ごとに紹介します。

2023
国立ワイン庁 ブドウ畑カダストル(国の畑の登録記録)

666 ha

政府統計
2026
VIVC

登録番号 6283。原産国ジョージア

国際データベース